プロジェクト・ヘイル・メアリーは間違いなく大傑作です。
基本情報
タイトル | 著者 | ページ数 | 発売日 | Kindle価格 |
---|---|---|---|---|
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 |
アンディ ウィアー | 375 | 2021/12/16 | ¥1782* |
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下 |
アンディ ウィアー | 359 | 2021/12/16 | ¥1782* |
※単行本¥1980
あらすじ
天井からぶら下がっているロボットアーム、いくつものカメラが見下ろしている。
取り付けれられた酸素マスク、体はたくさんの管につながれている。
「ここはどこだ?」
「なぜ私はここにいる?」
「いや、そもそも私は誰だ?」
やがて、断片的ながらも徐々に蘇る記憶により、とてつもない事が起きていることがわかる。
- 太陽光を阻む未知の物質の出現により、地球が氷河期に突入し滅亡の危機を迎えていること
- 地球から遥か彼方、ある星だけは未知の物質の影響を受けておらず、そこに行けば地球を救う手がかりが得られるかもしれないこと
- 自分は科学者で、地球を救うため宇宙船で旅立ち、長期航行に耐えるため船内で仮死状態にされていたこと
どういうわけか共に旅立った二人の仲間は船内で息絶えており、生き残ったのは自分一人だけ。
しかも燃料は目的地への片道分しかない。
これは特攻ミッションだ。
そして、とてつもない絶望的な状況の中で、さらにとてつもない事が起こる..
感想
いやー、面白いですね。
主人公が記憶喪失という設定自体は比較的ありふれたアイディアではあるものの、記憶が蘇る過去パートと現在進行形の現在パートとが交互に展開されることにより少しずつつ真実が明らかになっていく様は、謎解きの面白さに溢れています。
本作は、映画「オデッセイ」の原作「火星の人」で一躍有名になったアンディ・ウィアーの想像力、いや、想像力を超えてまさに妄想力が全開です。
しかしながら、ただの妄想で終わらないのが著者の恐ろしいところで、化学的根拠に裏付けられた上で論理が展開されるのが、著者の作品の大きな特徴になっています。
化学、生物学、物理学、人工知能..
謎解きでありながら単なる謎解きではない、さながら科学クイズを解くことで物語が進行する様は、ページをめくるたび読者の知的好奇心を刺激します。
しかし、正直、ここまであれば、傑作ではあっても万人が満足できる大傑作にはなってなかったでしょう。
(人によっては難解な妄想小説と捉えられても仕方ありませんから..)
ネタバレになるので詳しくは書きませんが(とにかく上巻の半分まで読んでみてください)、本書にはビッグサプライズが用意されており、これにより、科学小説とは異なる全く別の側面を見せ始めます。
知的好奇心を刺激する最高の科学小説でありながら、同時に極上のエンターテイメントでもある本作は、これ以上は存在しないといっても過言ではない壮大なスケールの中で、誰もが興奮を抑えることのできないラストへと向かいます。
アンディ・ウィアーの科学への造形の深さとストーリテイラーとしての才能が、小説の世界で化学反応を起こし、世紀の大傑作を生み出しました。